「持続可能なまちづくり」を目指し、新庄まつりの歴史と伝統を後世につなぐため奮闘する男性がいる。「山車(やたい)に親しみを持ってもらい、まつりを大好きになってほしい」と願い、“ミニ山車”を制作する男性の情熱を追った。

前に進むため“ミニ山車”制作

江戸時代から守り継いで268年になる「新庄まつり」が、4年ぶりに通常開催された。

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まつりが終わってもなお、その熱気を伝える場所が山形・新庄市にある。テーブルにずらりと並ぶ「小さな山車」は、すべて山車連盟常任理事の神部明さんが手づくりしたものだ。

新庄市民は「細かく作られていて、ダイナミックで色づかいもカラフル。目を引くように作られている」と、作品に感動した様子。間近で作品を鑑賞した男の子も「すごいです!」と目を輝かせた。

ミニ山車を制作中の神部さん
ミニ山車を制作中の神部さん

神部さんがミニ山車を作るようになったのは3年前。介護の仕事の傍ら、百円ショップで調達した材料を使って作っている。きっかけは新型コロナの感染拡大。この年、新庄まつりは戦後初めて中止された。

神部さんは「子どもたちの残念な思いが一番頭に浮かんだ。でも残念、悔しいという思いをずっと抱いていたら何も前に進まない。だったら自分に何ができるか、ということを考えて“ミニ山車”を作ろうと思った」と当時を振り返る。

下金沢若連の一員として40年以上、山車づくりに携わってきた神部さん。本物を作れない悔しさと希望を込めたミニ山車だったが、作り続ける理由に変化があったという。

「次につなげるために続けている」

少子化でまつりに携わる若者が減る中、神部さんは学校の協力を得て、まつりの魅力を伝える活動を始めた。

神部さんは若者を前に「ミニ山車をいろんな人から見てもらい、後世に残していければという思い。ミニ山車づくり始めましょう」と伝えた。

神部明さん:
山車を作れないのは悲しいし、20町内がひとつになってこそのまつり・新庄まつり。町内の方・市民・子どもたちのため、次につなげるために続けている

まつりの未来を担う若者たちへの継承。

声が掛かればどこへでも。一人でも多く山車に親しみを持ってもらい、まつりを大好きになってほしい。それが神部さんの願いだ。

まつりと共に…新庄で一番燃える夏

2023年の新庄まつり。神部さんは子どもたちと4年ぶりの通常開催を喜び、その手に力を込めた。

まつりに参加する神部さん
まつりに参加する神部さん

神部明さん:
子どもたちの掛け声と、若連一丸となった山車。本当に素晴らしい。これからもずっと伝統文化を継承していきたい。これが新庄まつり。新庄で一番燃える夏。これがあって私たちは生きている

熱気が最高潮に達したその時、「本当に、ありがとうございます」と語る神部さんの目から熱いものがこみ上げた。

神部明さん:
この素晴らしい山車を、感動を味わってもらいたい。本当に素晴らしいまつりだ…ありがとうございます!

新庄まつりへの愛情と冷めない情熱。神部さんはこれからも誰よりも熱く、まつりと共に生きていく。

神部さんのミニ山車の制作は30台目に突入したという。まつりへの愛と情熱を感じることができる作品展は、9月24日まで新庄市の雪の里情報館で開かれている。

(さくらんぼテレビ)

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