5月25日から、大雨をもたらす「線状降水帯」の発生を伝える情報が、これまでよりも最大で30分早く発表されることになった。近年、耳にすることが増えた線状降水帯。これまでよりも「前倒し」で発信される情報を、私たちはどう生かせばいいのだろうか。

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線状降水帯とは

線状降水帯とは、発達した雨雲が列をなし、ほぼ同じ場所に停滞して、数時間にわたって大雨をもたらす現象だ。日本で起きる集中豪雨の3分の2、梅雨時に限ると4分の3は、線状降水帯によるものとされている。注目されるきっかけとなったのは、2014年広島県で発生した土砂災害。わずか3時間で217.5ミリの雨が降り、土石流やがけ崩れが多数発生。77人が亡くなるという大災害となった。

2014年 広島県で線状降水帯による大雨で発生した土砂災害 
2014年 広島県で線状降水帯による大雨で発生した土砂災害 

発生したと「みなして」情報を発信

線状降水帯による集中豪雨によって、毎年のように各地で甚大な被害が発生している。気象庁は2021年から、この線状降水帯に関する情報の提供を開始。これまで気象庁は、大きく分けて2つの情報を発信してきた。線状降水帯が発生したことを伝える「線状降水帯発生情報」(「顕著な大雨に関する気象情報」)と、半日程度前から発生の可能性を伝える「半日前予測」だ。
今回、一つ目の「発生」情報の運用が一部変わった。これまでは、線状降水帯が「発生」した際に情報が発表されていたが、今後は30分先までに「発生が予測」された段階で発表されることになる。実際にはまだ発生していなくても、発生したとみなして、情報を発信するということだ。

予測されれば「ほぼ確実に」大雨に

気象庁が過去の事例を検証した結果、30分先までの予測で発表が可能だった171事例のうち、3時間で150ミリ以上の大雨となったのが143事例(84%)、130ミリ以上の大雨に至っては167事例(98%)と、ほぼすべてが危険な大雨になっている。線状にはならなかったとしても、予測されれば、ほぼ確実に大雨となっていることから、予測された段階で、少しでも早く大雨の危機感を伝えて、迅速な避難につなげてもらおうというわけだ。
今回の変更点はあくまで「情報が前倒し」。それだけで危険を避けられるわけではない。情報を生かすも殺すも、私たち受け取り側が「どう行動するか」にかかっていると言える。

発生予測エリアでは速やかな避難を

気象庁からは、「顕著な大雨に関する気象情報」という見出しで情報が発表され、ホームページの「雨雲の動き」では、線状降水帯の大まかなエリアが、赤い楕円で示される。実線は、すでに発生しているエリア、破線は30分先までに発生が予測されるエリアを示している。どちらの楕円であっても、災害が切迫した危険な状況になっているため、該当エリアに在住の人は、速やかに安全な場所に避難する必要がある。

東北地方も例外でない

気象庁による運用開始前には、宮城でも線状降水帯が発生したことがある。2015年の関東・東北豪雨では、線状降水帯が多数発生。東北地方初となる大雨特別警報が出され、県内11の河川、23カ所が決壊した。

2015年 関東・東北豪雨では県内11河川23か所が決壊
2015年 関東・東北豪雨では県内11河川23か所が決壊

気象庁による2021年の運用開始後、宮城県でこの情報は発表されたことはまだない。一方で、2022年8月、東北地方で初となる発生情報が、青森県、秋田県、山形県で発表されている。線状降水帯は「西日本だけの話ではない」のだ。

長期予報によると、7月は湿った空気の影響を受けやすく、東北地方は平年よりも雨が多くなる可能性がある。梅雨前線が停滞しやすいこれからの季節、特に梅雨の末期は、線状降水帯に注意が必要と言えそうだ。

大雨は線状降水帯「だけ」ではない

一方で、注意すべきものは線状降水帯だけではない。2022年7月、宮城県の大崎市や松島町で降った記録的な大雨は記憶に新しいところだが、この時の大雨は、線状降水帯の基準は満たしていなかったため、線状降水帯発生情報は発表されなかった。
また、この他にも、大雨に関する情報には「記録的短時間大雨情報」や「大雨警報」など、さまざまなものがある。「線状かどうか」だけにこだわるのではなく、気象庁が発表する他の情報にも注意して見ていく必要がある。

(仙台放送)

仙台放送
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