2021年8月、わずか1週間で年間雨量の半分にも上る雨が降り、土砂災害に見舞われた佐賀・嬉野町の茶畑。1年8カ月がたった今も“復旧手つかず”の茶畑は多く、農家は2023年も雨の季節を前に不安を募らせている。
「うれしの茶」摘み取り始まる
先週、今シーズンの摘み取りが始まったうれしの茶。冬にはかなり冷え込み、その後、緩やかに気温が上昇したことから、最大級の生産量を誇る白川製茶園の茶葉は味と色がよくついた香り高い出来になった。
この記事の画像(14枚)白川製茶園・白川稔さん:
きょうこの日のために1年かけて栽培してきたので、うまいお茶を絶対作らなくちゃいけない
白川製茶園・白川天翔さん:
良いものを絶対お客さんに届けるというのを第一にやっていきたいと思っています。それはもう、災害前からも変わらないことなので
年間雨量の半分が1週間で…
2021年8月、記録的な雨量を観測した嬉野市。わずか1週間で平年の年間雨量の半分にも及ぶ1,170ミリの雨が降り、市内約80カ所の茶畑で土砂災害が起きた。
白川製茶園・白川稔さん:
ちょっと、とりあえずぼうぜんとするしかなかった。どうしようというよりも、まずぼうぜんとしたというのが正直なところ
白川製茶園でも大規模な土砂崩れが発生。山間部にある茶畑が崩れ、並んで生えていた木や霜を防ぐファンをなぎ倒していった。
被害を受けた茶畑は、土砂崩れから1年半余りがたったいまも、ほとんど手つかずのままとなっている。
白川製茶園・白川稔さん:
こればっかりは僕たちの力ではどうにもできない
市内の茶畑の中には復旧作業が始まっているところもあるというが、“業者の順番待ち”だという。
白川製茶園・白川稔さん:
行政の方もね、大変だと思うんですよ。まあ、順番待ちみたいな形なのかな。つぶれたから、その補塡(ほてん)をしましょうっていうのは、基本的に自分たちの収入保険しかなくて、つぶれた分の(自治体からの)補償っていうのは今現在無いですね。それこそ、災害と一緒にコロナ禍も来たので、それは厳しかったですね
白川製茶園・白川天翔さん:
本当に狭くなって崩れていく畑を見るのはちょっとつらいですね
100年続く茶畑 過去に例がない被害
嬉野市のほかにも長崎・東彼杵町や鹿島市、太良町にも茶畑がある白川製茶園。実は嬉野市の畑が被害を受けた前の年の2020年には鹿島市の畑で土砂災害が起きていた。
近隣の農家の協力もあり、こちらは被害から約2年半たった2022年の年末に復旧が完了した。
白川製茶園・白川稔さん:
やっとかっていう気持ちとありがとうございます、両方の気持ちです。やっぱり業者の方々にも、本当に途中で水が出てきて設計変更とかあったんで、業者の方々、行政の方々には感謝ですね
白川さんの祖父の代、約100年前から続く白川製茶園だが、このところの茶畑の被害は過去に例がない。また、たとえ復旧できても、そこに植える茶の木から収穫できるようになるのは5年間の生育期間を経たあとだ。
白川製茶園・白川稔さん:
崩れた所は、実際今後お茶の木を植えられるかどうか。ひょっとしたら、面積がつぶれたままになる方が強い
最近では毎年のように各地を襲う豪雨。山間部に多い茶畑では、いつまた崩れるか分からないという不安はつきないが、白川さん親子は代々受け継いできた茶畑を守り、うれしの茶のおいしさをつないでいく決意を新たにしている。
白川製茶園・白川天翔さん:
いま植わっている畑全部、そういう風に代々親とかじいちゃんの世代から続いてきているものなので、大事に育てていいものを皆さんに届けていきたいと思っています
白川製茶園・白川稔さん:
どういえばいいですかね、うまいお茶を絶対作らなきゃいけない、それを消費者の方々に届けるっていうのが僕たちの使命なのかな
(サガテレビ)