12歳で視力の大半を失った高校生が盲学校を卒業。入学当時は気持ちの整理ができず、葛藤の毎日だったが、「人生の再スタートを切ることができた大切な場所」と学校生活を振り返り、大学進学への決意を新たにしている。

病気で失った視力…盲学校に転校

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県立盲学校 高等部・牧野愛菜さん:
見えなくなったり病気になったからこそ気づけたことは、たくさんたくさんあるので、その経験を大切にしたい。かわいそうと思われたくないんですよ、わたし。だからこそいろいろ挑戦していて、楽しく何でも挑戦したいと思う

佐賀県立盲学校高等部の牧野愛菜さん。光を感じることができるが、ぼんやりとしか見えない。牧野さんは、中学1年生の夏に白血病を患っていることがわかり、その後、治療中に感染症にかかり「弱視」になった。

1年に及ぶ入院生活のあと、盲学校に転校。「障害者」となった牧野さんが出会ったのが、視覚障害者向けの卓球「サウンドテーブルテニス」だった。

県立盲学校 高等部・牧野愛菜さん:
音の距離感とかあったり、選手によってもボールの打ち方、癖で音が違ったりするので、面白いなと思います。すごく大好きな競技ですね

サウンドテーブルテニスをする愛菜さん
サウンドテーブルテニスをする愛菜さん

牧野さんは、週に4日の練習で見る見るうちに上達。2022年、栃木県で開催された全国障害者スポーツ大会では、見事3位という成績を残した。

休日は、親子水入らずの時間を過ごす。

母・牧野愛美さん:
ハートがここにこうあって。鳥の羽みたい

休日を楽しむ愛菜さんと母・愛美さん
休日を楽しむ愛菜さんと母・愛美さん

牧野さんは、4月から茨城県の筑波技術大学で情報技術などを学ぶ。別々の生活が始まり、今まであたり前だったこの時間も残りわずかとなった。

母・牧野愛美さん:
目を見えるようにしてあげることは、わたしができることじゃないから、自分の進みたい道に進んで楽しい毎日を過ごせるような、そういう人生を送ってくれたら、わたしは一番幸せですね

気持ちの整理つかず“葛藤の毎日”

涙を拭う母・愛美さん
涙を拭う母・愛美さん

卒業式には、祖母・美知子さんと母・愛美さんが出席。旅立ちの日を見守った。

県立盲学校 高等部・牧野愛菜さん:
盲学校に入学してきた当時は、わたし自身、気持ちの整理ができておらず、葛藤の毎日でした。(盲学校は)人生の再スタートのきっかけとなった大切な場所です

卒業式後のホームルーム
卒業式後のホームルーム

卒業式のあとのホームルームは、高校生活最後の時間。12歳で地元の中学校から盲学校に転校した牧野さん。さまざまな思いがよぎる。

県立盲学校 高等部・牧野愛菜さん:
5年間の盲学校生活を振り返ると…本当にさまざまなことがあったと思います。…ごめんなさい。わたし自身とても不安で…1人だけ違う世界にいるような気持ちでした。いつも笑顔で明るくわたしを応援してくれて、背中を押してくれて本当にありがとう

盲学校卒業…そして“新たな挑戦”へ

祖母・牧野美知子さん:
一生懸命やり尽くしたということですね。わたしにとって愛菜は、キラキラ輝いてダイヤモンドみたいですね

母・牧野愛美さん:
だんだん前向きに気持ちが変わって、わたしもうれしいので。「寂しい」というよりも、笑顔で「頑張ってね」と送り出してあげたいという気持ちの方が強いです

家族、恩師の思いを胸に、牧野さんは新たな挑戦に臨む。

県立盲学校 高等部・牧野愛菜さん:
これからが人生の本番とわたしは思っていて、挑戦していろんなことを吸収して、自分の人生、自分で切り開いていきたいなという気持ちでいっぱいです

(サガテレビ)

サガテレビ
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