全国の自治体で脱炭素化に向けた取り組みが進められる中、鹿児島・阿久根市では、市役所など対象の公共施設の電力を全て太陽光発電による再生可能エネルギーで賄うという、県内初の事業がスタートする。2023年4月の事業開始を前に、エネルギーの「地産地消」に向けた動きを取材した。

6カ所の公共施設電力を太陽光発電に

阿久根市役所の駐車場や阿久根市が管理する番所丘公園の空きスペースには、太陽光発電用のソーラーパネルが設置されている。現在、市が進めているのは太陽光を使った大規模な発電計画だ。

番所丘公園に設置されたソーラーパネル(鹿児島・阿久根市)
番所丘公園に設置されたソーラーパネル(鹿児島・阿久根市)
この記事の画像(11枚)

年間228万kWhを発電できるソーラーパネルを設置し、市役所、消防署、市民交流センター、公園管理事務所、社会福祉協議会、保健センターの6カ所の公共施設の電力を、全て太陽光発電で賄うという計画だ。

運用開始予定は2023年4月で、阿久根市役所企画調整課の的場史紘さんは「完全に再生可能エネルギー由来の電源となるので、本当に環境にやさしい阿久根市がアピールできる機会になるのではないか」と胸を張る。

年間約1300トンのCO2削減見込む

阿久根市では2021年9月、脱炭素社会を目指し、2050年までに二酸化炭素の実質排出ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言した。この事業はその一環としてスタートさせた。

市役所の駐車場や公園などに設置されたソーラーパネルで発電された電力は、まず、街の中心部に設置された蓄電池に蓄えられ、各施設に専用の送電線を通じて供給される。蓄電池には各施設で電力をフルに使っても12時間は稼働できる電力を蓄えることが可能だ。

さらに、導入された最新のソーラーパネルは日差しの弱い曇りや雨の日でも発電可能で、天候に左右されず安定して電力を供給することができる。この事業で、年間約1,300トンのCO2削減が見込まれるほか、高騰する電気料金の節約にもつながる。

「収益が出た分は地元に還元」

今回、阿久根市は、ふるさと納税サイトを運営する東京のIT企業「トラストバンク」と協定を結び、設備についてはトラストバンクが、国の補助金などを活用して約11億円をかけ整備した。

トラストバンクの前田功輔執行役員は「SDGsの観点、あるいは脱炭素という観点に関しては阿久根市単独の問題ではなく、県、ひいては全国、全世界の問題と理解している」と語る。そしてトラストバンクとしては「これまで地域の後方支援という形で回らせていただくことがあったと思っているが、ここから新たな個別の事業につなげていくこともできるのではと思っている」と、今回の取り組みでの新たな可能性に期待している。

トラストバンク・前田功輔執行役員
トラストバンク・前田功輔執行役員

また、阿久根市の西平良将市長も「今回、自前で発電施設を持つということは、電力を確実に確保できるということが環境として整ったのだと思う」とした上で「収益が出た分は、地元の集落にも還元していこうと思っているので、市民にとって良い事業になるのでは」と明るい見通しだ。

阿久根市・西平良将市長
阿久根市・西平良将市長

電力を「地産地消」するという鹿児島県内初の取り組み。阿久根市がモデルケースとなり各地に広まれば、脱炭素社会へ向けた動きが加速することも期待され、事業の行く末が注目される。

(鹿児島テレビ)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(11枚)
鹿児島テレビ
鹿児島テレビ

鹿児島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。