「それはやっちゃだめって言ったでしょ!」

「何度言ったら分かるの!」

余裕がないときに子どもにこんな言葉をかけてしまい、その後自己嫌悪に陥る親も多いのではないだろうか。

そんな時、「まっいいか」という言葉が大切だと語るのが、学校の「先生の先生」として活躍中の現役小学校教師・庄子寛之氏だ。

多くの子どもとその保護者と接してきた経験から、子どもの可能性を伸ばし、やる気を引き出すことができる家庭には「待ち上手」という共通点があるという。

庄子氏が学校の教室で行ってきたこと、保護者の方から学んだケーススタディなどをもとに、5つのステップと5つのマジックワードにまとめた著書『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)から、一部抜粋・再編集して紹介する。

伸びる子の親の共通点「待ち上手」

「我が子のことが分からないんです。どうしたらいいでしょうか」

長く教師をしてきて、子育てに悩む親御さんが多いことを痛感します。

我が子のことが大好きで、子どもの才能を伸ばしてあげたいけれど、どうしたらいいのか分からない。宿題をしない。ゲームをやめない。片付けない。

子どもが言うことを聞かないとき、あなたはどうしますか?

叱る。怒る。注意する。罰を与える。

どれも教育効果はきわめて薄いです。

むしろ逆効果のことが多くて、親であるあなたとの関係をどんどん悪くしてしまうことでしょう。

私は教師として、たくさんの子、たくさんの保護者と接してきました。その中で、伸びる子の親には、1つの共通点があったのです。

親がまず笑顔であるかが大切だ(イメージ)
親がまず笑顔であるかが大切だ(イメージ)
この記事の画像(6枚)

それが「待ち上手」です。

口出ししたくなるタイミングでも待ち、我が子の可能性を信じていました。

いつも笑顔で、ご自身が自分の人生を楽しんでおられるようでした。

とはいえーー理想は分かるけれど、実践はできない。つい怒ってしまう。

そんな方々のために、私が保護者の皆様から学んできたことや、自分のクラス・家庭で行ってきたことを、5つのステップと5つのマジックワードにまとめました。

読みながら1つひとつ実践するだけで、誰でも「待ち上手」な親になることができます。すると、子どもがいきいきと輝いてくるのです。

何か言いたくなったら「待つ」。

子育てはこれの繰り返しです。一緒に考えていきましょう。

ソファで寝てしまう…悪循環に陥るお母さん

【ケース】
私は仕事をフルタイムで行っています。
パートナーも協力的ではあるのですが、夕飯は私が作らなくてはいけません。
夜は子どもの宿題の丸つけもしなくてはならず負担です。
早く寝かしつけようと思っているのに、遅くなってしまってイライラ。
子どもを寝かしつけてから、自分のことをしようとしても、疲れてなかなかできません。
終わっていないままソファーで寝る日が続いてしまい、次の日も疲労感が残ります。
どうすればいいでしょうか?

疲れのままにソファで寝てしまうことも(イメージ)
疲れのままにソファで寝てしまうことも(イメージ)

読者の皆さんの中にも、ソファーで寝るまではいかなくても、同じような生活をしているお母さんは多いのではないでしょうか。

どうしたらいいか、ご一緒に考えていきましょう。

今回の一番問題なところは、自分の意思で物事を進められていないことです。

やらなければならないことに追われ、終わらせることでいっぱいいっぱい。やらなければならないことも終わらないので、自分の状態も悪くなる。

自分の状態が悪くなれば、自分が望む子育てもできない…。そんな悪循環を抜け出すためには、どうしたらいいのでしょうか。

「まっいいか」で正しく諦める

「子どものためより自分のため」とはいえ、子育て中はどうしても子ども中心の生活になってしまうものです。

未来のために今を我慢するのはよくないと分かってはいても、仕事も家事もやっていると、自分のことが後回しになってしまいます。誰でもあることですね。

自分を責めず、自分をゆるしてあげることが大切になってきます。

「まっいいか」で心を落ち着ける(イメージ)
「まっいいか」で心を落ち着ける(イメージ)

そんなときに効果的なマジックワードは「まっいいか」です。

「今日もソファーで寝てしまった。でも、まっいいか」

「今日も寝かしつけるのが遅くなってしまった。まっいいか」

「まだ家事が終わってないけれど、まっいいか。今日は寝てしまおう」

最初の「忙しくて、やることがすべて中途半端になってしまう私」でしたら、上のような使い方をするのです。

「そんなに自分を甘やかしていてはいけないのでは?」

「家族に迷惑をかけてしまう」

「今日はよくても、明日やらないと。結局どんどんたまってしまう」

そう思われる方もいらっしゃると思いますが、そんなことはありません。

「まっいいか」と諦めることで、家族の笑顔は増える(イメージ)
「まっいいか」と諦めることで、家族の笑顔は増える(イメージ)

あなたが苦しそうな顔をしていれば、一番被害を受けるのは子どもです。

あなたが忙しいときに限って、熱を出したり、問題を起こしたりしませんか?

それは、親であるあなたのことを見て、関心を引きたいからなのです。

あなたが「まっいいか」とあきらめることで、家族の笑顔は格段に増えていきます。

あなたの心と体が整い、家族の笑顔も増える。

そんなすてきな効果があるなら、やるしかないですよね?家族のためより自分のため。無意識で行えるよう習慣化する。

朝、好きなことをする。そのために自分に「まっいいか」と言い続ける。

自分が整うことで、一日のスケジュールを俯瞰して見られるようになり、子ども自身をありのままに見る余裕もできます。

そうすると子どもと適切な距離感で関われるようになっていきます。

『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)
『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)

庄子寛之(しょうじ ひろゆき)
東京都公立小学校指導教諭。
学級担任をするかたわら、「先生の先生」として全国各地で講演を行っている。担任した児童は500人以上、講師として直接指導した教育関係者は2000人以上にのぼる。
元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2013年、U-21日本代表監督としてアジア大会優勝、2019年、U-19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。
著書に『叱らない技術』『with コロナ時代の授業の在り方』(ともに明治図書出版)、『オンライン学級あそび』(学陽書房)など多数。

庄子寛之
庄子寛之

東京都公立小学校指導教諭。
学級担任をするかたわら、「先生の先生」として全国各地で講演を行っている。担任した児童は500人以上、講師として直接指導した教育関係者は2000人以上にのぼる。
元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2013年、U-21日本代表監督としてアジア大会優勝、2019年、U-19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。
著書に『叱らない技術』『with コロナ時代の授業の在り方』(ともに明治図書出版)、『オンライン学級あそび』(学陽書房)など多数。