今日このあと国立競技場を舞台に、午後1時05分にキックオフを迎える『JリーグYBCルヴァンカップ』決勝。

このルヴァンカップは国内サッカーの三大タイトルのひとつで、J1リーグ王者、天皇杯と並ぶビッグタイトルだ。

今年で通算30回目を迎える歴史ある大会にして、優勝賞金は1億5千万円にものぼる。

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その実況席で解説を務める内田篤人氏に、この対決の注目ポイント聞いた。

内田が語る一発勝負の醍醐味

「もう一発勝負っていうのは誰が見ても分かりますし、決勝でお客さんの雰囲気もすごい良いし、ちょっと特別なものがありますね」

内田篤人がそう話すルヴァンカップは、Jリーグ発足前の1992年から始まった。

第一回大会でMVPを獲得した三浦知良
第一回大会でMVPを獲得した三浦知良

第1回大会でMVPに輝いたのは、今も現役で活躍する三浦知良。当時25歳のキングカズは、決勝戦の舞台で自らゴールを決め、ヴェルディ川崎に栄冠をもたらした。

その後も、特別な雰囲気と緊張感のあるファイナルが受け継がれて来た、伝統ある戦いだ。

内田は現役時代その決勝の舞台に立てなかったが、その熱さは知っている。

「やっぱり他の選手たちも見ますからね、決勝は。両チームだけの一発勝負というのは非常に熱が入って、見ていて面白いですね」

今大会ファイナルに進出したのは、2大会連続のファイナリストで、1年越しのリベンジに挑むべく決勝まで上り詰めたセレッソ大阪と、初のルヴァンカップ制覇を狙うサンフレッチェ広島だ。

広島は先日の天皇杯決勝でPK戦の末に敗れ、雪辱を期している。

内田はこの決勝の戦いを次のように分析する。

「お互い今シーズンは順位もそうですけど安定した戦いをしているので。ホームとアウェイとうまく戦い方を調節しながら、勝ち上がってきたなという印象です」

J1でのレギュラーシーズンの順位は広島が3位、そしてセレッソ大阪が4位。

共に堅実な戦いを両チームは、このルヴァン杯の戦いでも着実に勝ち上がり、一発勝負の決勝に駒を進めて来た。

その中で勝敗の鍵を握るであろうポイントについて、内田は”交代選手の使い方”を挙げた。

「僕は決勝戦というのは案外というか、相手の様子見みたいなところもあるので、途中から入ってくる選手が結構大事だと思うんです。ワンプレーで流れを変えられる選手というのは非常に貴重なので、お互いにそういうカードを持っていると面白いかなと思います」

第24回大会で得点を決めた当時浦和レッズ・李忠成
第24回大会で得点を決めた当時浦和レッズ・李忠成

過去のファイナルでも、第24回大会の李忠成や、第27回大会の小林悠など、途中交代の選手が流れを呼び込み、ルヴァンカップを獲得したケースはよく見られている。

第27回大会で得点を挙げた川崎フロンターレ・小林悠
第27回大会で得点を挙げた川崎フロンターレ・小林悠

果たして、その歴史は繰り返すのだろうか?

「ここまで来ればどちらももう、変な話がっぷり四つというか、決勝はごまかせない戦いがあるので。そこは非常に見ものだなと思っています」

“高校生Jリーガー”北野颯太はワンダーボーイとなるか?

今季メキメキとその実力を伸ばしているセレッソ大阪のフォワード・北野颯太(18)。

「もちろん技術が高いとかスピードがあるのは見ればわかるんですけど。そこからもう一つ深く見ると、サッカーをちゃんと理解しながらプレーしようとしている選手ですね」

内田がそう評するように、今年セレッソの下部組織からトップチームに昇格すると、ルヴァンカップではプロ初ゴールを含む5試合3ゴールをマーク。その活躍が認められ、今大会のニューヒーロー賞を受賞した成長著しい若手ストライカーだ。

まだあどけなさの残る高校3年生は、今年2月25日に当時17歳でプロ契約を締結したばかり。

3月2日、ルヴァンカップのグループステージ第2節でマークしたプロ初ゴールは、17歳6か月17日でのゴールとなり、現在モナコでプレーする南野拓実の最年少ゴール記録(18歳2か月7日)を更新した。

その若さとサッカーIQを武器に、このファイナルではどんな活躍を見せるのか。

北野はインタビューで「こういう舞台で点を取れる選手になりたいとずっと思ってきたので、貪欲に狙っていきたいと思います。カップを掲げて星(タイトル)を一つ増やせればいいなと思います」と力強く語っている。

PK失敗の雪辱なるか広島・満田誠

内田はサンフレッチェ広島のフォワード・満田誠(23歳)も注目選手として挙げた。

「プレー見ていても勢いがあるというか。迷いなく遠目から振り抜く選手ですね」

ルーキーイヤーながら、リーグ戦ではチームトップタイの8ゴールをマークし、7月には日本代表にも選出されるなど、その勢いはとどまる事を知らない。

満田は決勝に向けて次のように意気込んだ。

「積極的に常にゴールに向かってプレーできるのが自分の売りだと思いますし。自分が出ている出場時間は100%出し切ろうというのは意識してやっています」

ピッチ上ですべてを出し尽くすプレー。ルーキーながら自分のスタイルを把握している満田だが、タイトルに必要なものをどう捉えているのだろうか。

「自分がしっかりとチャンスでゴールを決め切ることですね。そうすれば場所がどこであれ相手がどこであれ、しっかり勝つことができると思います」

天皇杯決勝では延長戦で手にしたPKの好機を満田が失敗。このチャンスを逃すと、チームは流れを引き寄せることが出来ず、PK戦の末に敗れ初優勝を逃した。その過ちを大舞台で繰り返すわけにはいかない。

名将スキッぺ監督×アルバイト出身の小菊監督

今日の決勝は、対照的な経歴を誇る2人の監督が織りなすタイトルマッチでもある。

サンフレッチェ広島・スキッペ監督
サンフレッチェ広島・スキッペ監督

サンフレッチェ広島を率いるのは、これまでヨーロッパの名門クラブやギリシャ代表監督などを歴任し、2002年の日韓ワールドカップでは、ドイツ代表のコーチとして準優勝に貢献した、ミヒャエル・スキッペ監督。

スキッペ監督は「歴史の重みのある大会、スタジアムでのプレーは、選手にもサポーターにも特別なものがあります。全力を尽くし素晴らしいプレーをお見せできるでしょう」と自信をあらわにする。

セレッソ大阪・小菊監督
セレッソ大阪・小菊監督

一方、セレッソ大阪の指揮官は、Jリーガーとしての選手経験を持たない小菊昭雄監督だ。

「当時の(C大阪の)社長に手紙を書いて面接をしていただいたというのがきっかけです」

この小菊監督、セレッソ大阪のアルバイト採用からのたたき上げで指導者の道を歩んできた異色の指揮官で、副業として喫茶店で働いたこともある経歴の持ち主。その後、コーチやスカウト、フロントなど、さまざまな職種を経験してきた人物だ。スカウト時代には香川真司の才能を見出した実績もあわせ持つ。

昨年の決勝で名古屋に敗れ準優勝。1年越しのリベンジに挑む。

「私みたいなキャリアの人間が結果を出すことによって、プロサッカー選手にはなれなかったけれども、将来トップチームのコーチをやりたい、監督をやりたい。そういった夢を追いかけられるような存在になれたらと思います」

世界を知る知性派か?クラブ一筋の努力家か?

カップを巡る戦いは間もなくキックオフだ。

(※一部文章を修正しました。)

2022JリーグYBCルヴァンカップ決勝
セレッソ大阪×サンフレッチェ広島
22日(土)午後1時〜フジテレビ系列生中継
https://www.fujitv.co.jp/sports/soccer/levaincup/index.html

LIFE WITH FOOTBALL
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