今回のBSフジLIVE「プライムニュース」には、岸田文雄首相が緊急生出演。予算委員会での論戦を前に、山積する課題に対する覚悟と具体策について伺った。

支持率急落の岸田首相「議論したことを実行に移す時期」

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長野美郷キャスター:
発足から1年となる岸田内閣の支持率推移。50%前後の支持率を維持してきたが、7月の参院選の後に支持率が急落。時事通信の世論調査では支持が27.4%で、初めて20%台に落ち込んだ。急落の理由は旧統一協会問題と国葬問題と見られるが、対応について反省などは。

岸田文雄 首相:
支持率に一喜一憂せずとは思うが、厳しい声には真摯に丁寧に謙虚に向き合わなければ。旧統一教会の問題は、社会的に問題が指摘されている団体と関係があったことについて謙虚に反省しながら、今までについて丁寧に説明する。同時に、今後関係をしっかりと断つことが何より大事。自民党でもガバナンスコードの見直しや関係を断つことをどう担保するかについて議論を進めている。政府では幅広い相談窓口を用意し、消費者契約法をはじめとする法律の見直し等を行い、被害に遭われている方の救済に全力を注ぐ。また国葬儀の問題は、有識者の意見も伺い論点と意見を整理する。その上で、総理経験者の国葬儀について一定のルールを考えていきたい。

岸田文雄 首相
岸田文雄 首相

反町理キャスター:
その国葬の費用。16.6億円という見積もりだったが、フジテレビのニュースで、4億円近く安い総額12億円台に収まったと報道した。これについては。

岸田文雄 首相:
速報値であり、よく確認して精緻な数字を出さなければいけない。海外から多く迎えた賓客の方々の滞在日数が当初の想定より限定されていたことにより、警護費や接遇費が少なくなった。いずれにせよ、しっかりと数字を明らかにし今後の議論に資する形で提供したい。

反町理キャスター:
支持率が高かったころ、日本維新の会の馬場代表が岸田さんについて「無策無敵」と述べた。また、検討はするが実行しないと、遣唐使にひっかけて「検討使」という言葉も一部メディアなどで取りざたされた。今支持率が急落した状況で、まさに実行力が問われる。

岸田文雄 首相:
この1年間、例えばロシア外交政策の大転換やコロナの水際対策など、具体的な決断・実行は積み重ねてきたと思っている。だが、今私たちが直面する課題として、資本主義自体の持続可能性や、ポスト冷戦が終わり新しい国際秩序が問われている。大がかりな課題に大がかりな政策を訴えていかなければならず、実行に至っていない部分があるのは御指摘のとおりで、謙虚に受け止める。この1年間議論を積み重ねたものを実行に移す時期だという覚悟で政策を進めていきたい。

物価高騰に応える規模の補正予算を、賃金上昇のため「リスキリング」を

長野美郷キャスター(左)、反町理キャスター(中)、岸田文雄 首相
長野美郷キャスター(左)、反町理キャスター(中)、岸田文雄 首相

長野美郷キャスター:
この臨時国会で補正予算の審議がなされるが、この規模感と最重要課題については。

岸田文雄 首相:
最重要課題は物価高騰への対応。2つ目として、それに見合うだけの賃上げ。3つ目として、やはり経済成長。そのための投資、改革。この3つ。これが大きな課題であると思う。具体的な政策を今、与党と協議しながら用意している。

反町理キャスター:
30兆円規模という話もある。

岸田文雄 首相:
数字はいろいろ飛び交っているが、去年との比較で規模をどうするか。去年の経済対策は半分以上がコロナ対策で、ウィズコロナへ向けた今の段階では去年より少なくてもいいのでは、という意見もある。一方で、我々は去年とは桁外れの世界規模の物価高騰の中にいる。アメリカや中国をはじめ国際的な景気が下振れリスクにさらされ、間違いなく日本にマイナスの影響が来る。それに応える意味で規模を考えなければいけない。
内容ももちろん大事だが、ある程度の規模のものをしっかり用意しなければメッセージが伝わらない。この段階で具体的な数字は申し上げないが、内容も規模もともに大事だという姿勢で与党と議論を積み重ねている。

長野美郷キャスター:
日本経済低迷の象徴が賃金の問題。2021年の日本の平均賃金は、統計が出ているOECD34か国中24位と低迷。実質賃金は30年近くほぼ横ばいとなっている。改善のため岸田総理が打ち出したのが「リスキリング」。個人のリスキリングへの公的支援について、人への投資策を5年間で1兆円のパッケージに拡充する方針を掲げた。

岸田文雄 首相:
リスキリング、つまりキャリアアップを目指す人がより高い賃金を目指してさまざまな研修を受けたり学び直しをすることが必要になってくる。日本経済の再生に重要なグリーンやデジタルの分野は、絶えず非連続的なイノベーションが起こり続ける世界。突然大きなイノベーションが起こり状況が変われば、その分野に労働力を移動させていかなければ経済全体が動かない。
そのため、必要とされる労働移動に対応するリスキリングを用意しなければいけない。2023年6月までにこれに関する大きな指針をつくり、民間の協力を得て日本の経済自体を変えていかなければ。もちろんセーフティーネット等はしっかり用意をして、失業がない形での労働移動や、意欲のある人がキャリアアップしたいときに、それを応援できる仕組みを。

国民が実感する電気料金の軽減を。原発は未来を考え再稼働へ

長野美郷キャスター:
物価高、特に冬に向けて懸念される電気料金の値上がりに対して岸田総理の発言。「家計・企業を直接的に支援するため、前例のない思い切った負担緩和対策を行いたい」とした上で「国からの巨額の支援金が電力会社への補助金ではなく、全て国民の負担軽減に充てられることを明確に示す仕組みとしなければ」。これについて。

岸田文雄 首相:
ロシアのウクライナ侵略を背景とする国際的なエネルギー危機により、日本では昨年比で電力料金が2〜3割上がっている状況。ウクライナ情勢も世界的な物価高騰も続くことが心配される。電気料金はなだらかにではなく階段式に上がる。電力会社にお金を投入するのではなく、請求書でどれだけ料金が下がったかよくわかる形で、皆さんに対策を実感してもらえるように。実現のための具体的なシステムや全体の仕組みを詰めている。国民の皆さんの心に届くような政策を用意したい。

長野美郷キャスター:
電気料金高騰の背景には、東日本大震災の後、原発の稼働が一部にとどまっている事情がある。岸田総理は「休止火力の稼働や必要な燃料の調達、原子力発電の最大限の活用など、供給力の確保に業界全体でしっかり取り組んでいただきたい」と発言。現在の日本の電源構成を見ると原子力は全体の3.9%にとどまっている。

岸田文雄 首相:
さまざまな選択肢を用意しバランスよくエネルギーを調達しなければいけない。そのメニューの一つとして、原子力についても正面から今一度議論を。原子力に関しては安全が大前提で、規制等の緩和は全く考えていない。その中で再稼働へしっかり進めていかなければ。中長期的な未来を考え、運転期間の延長や次世代革新炉の開発や建設についても議論をしてもらいたいと、専門家を中心とするGX会議(グリーントランスフォーメーション実行会議)に指示した。

反町理キャスター:
処理場についての結論が見えないままに増設、置換えまたは再稼働推進という部分について、納得できない人も多いのでは。

岸田文雄 首相:
かなり長期的なことを議論しなければならない。どの時点で、あるいはどのスパンでものを考えるか、冷静な議論をしなければ。それも含めて指示を出した。年末に向けて議論を深めてもらいたい。

コロナ対策は機動的に。防衛費増額は内容・予算・財源の結論を年末に

岸田文雄 首相
岸田文雄 首相

反町理キャスター:
10月11日から水際規制が緩和された。インバウンドの観光客増加は日本経済にとって間違いなくプラスになる一方、2023年の1〜2月にはまた異なる変異株による新型コロナ流行の第8波が来るという見通しもある。中長期のビジョンはどうなるか。

岸田文雄 首相:
変異株についても、WHOが懸念するような変異株に指定されるものが出れば、発生国との関係で水際対策を考えていく。必要な対応は機動的に。一方、世界的な新型コロナに対する対応とのバランスも考えなければいけない。

反町理キャスター:
防衛費について。5年間で対GDP比の2%にという目標が自民党の公約の中に入っている。すると2027年度には年度の防衛予算が10兆を超えていなければいけないという計算になる。防衛予算の内訳と、増やすスケジュール感のイメージは。

岸田文雄 首相:
他の国と比較で、対GDP比は一つの考え方として尊重しなければならない。ただ、単に防衛装備を用意すれば防衛力が充実するのではなく、それを支えるための研究や技術、また経済力などがあってこそ総合的に我が国の防衛力が充実し、結果として国民の命と暮らしを守れる。金額はもちろんだが、内容として何が入るか、予算がどれだけいるか、裏付けとなる財源をどうするか。三位一体での議論をスタートしている。有識者の議論も進んでおり、政府においても議論し、与党からもさまざまな提言を受けている。この3つについて、年末に向けて結論を出していきたい。

長野美郷キャスター:
視聴者の方から。「マイナンバーカードに保険証を紐付けするなんて、申請率が低いから無理やり義務化しようとしているようにしか見えません。セキュリティの面から断固反対」。

岸田文雄 首相:
日本を国際社会に決して劣らないデジタル社会にするための一つの基盤、パスポートがマイナンバーカード。色々なご意見には向き合っていくが、ご理解いただければ。  
 

(BSフジLIVE「プライムニュース」10月13日放送)