えっ!?10万円支給検討!?実はー
立憲民主党の山井和則衆院議員は「岸田首相はやっているふり、聞いているふりのアリバイ作りと思われかねない」と衆参両院の本会議での首相答弁に怒りの声をあげた。山井議員が語るのは18歳以下への10万円相当の給付をめぐり、離婚などによって受け取れない世帯が出ている問題だ。
政府は、18歳以下への10万円相当の給付について9月分の児童手当の受給者に支給するとしているが、その後に離婚した場合などに親権を持っていても受け取れないケースがあると指摘されている。立憲民主党の調べでは、支給されない可能性のある子供の数は4万人余り、その額は計41億3240万円に上るという。
この記事の画像(7枚)立憲民主党の山井議員らは、2021年12月からこれを問題視し、政府へのヒアリングを通じて給付を促すとともに、自治体の裁量で自由に使える地方創生臨時交付金を活用し10万円を給付している地域もあることから、政府に対し、交付金の活用が可能とする方針を都道府県に通達するよう促し、政府はこれを受け入れた。
しかし、交付金を活用するのかはあくまでも自治体の判断に委ねられていることから、立憲民主党は、通常国会召集日の17日に受け取れない世帯に給付するための法案を提出、子供を養育していない親が給付金を受け取った場合には、自治体が返還を請求出来る規定も盛り込んだ。
さらに岸田首相の施政方針演説に対する代表質問でも19日に泉健太代表(衆院本会議)、翌20日に水岡俊一参院議員会長(参院本会議)がそれぞれ「10万円不支給問題」に対する岸田首相の考えを直接質した。しかし泉代表、水岡議員の質問に対する岸田首相の微妙な答弁の違いが国民や議員、メディアに正しく伝わることはなかった。離婚世帯への10万円相当をめぐる2日間の岸田首相答弁を見比べたい。
(立憲・泉健太代表への答弁 19日)「基準日以降に離婚した世帯への制度的な対応は難しい面がある。自治体に対し、地域の実情に応じて新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金による給付金の支給を検討することをお願いしています」
(立憲・水岡俊一参院議員会長への答弁 20日)「基準日以降に離婚された場合の現在、養育者への給付金の支給を検討することをお願いするとともに生活に困窮されているひとり親家庭に対して、住民税非課税世帯に対する10万円の臨時特別交付金のほか、生活困窮者、自立支援金など様々な政策を重層的に講じる中できめ細かく支援を行うこととしております」
19日の首相答弁は、不支給世帯には交付金を活用出来るという従来の政府対応を読み上げるのみだったが、翌20日に「給付金の支給を検討することをお願いする」と言う言葉が入ったことで、岸田首相が「支給に向けた新たな検討を表明した」と受け止めが広がった。実際に「岸田首相が支給検討表明」と報じるメディアもあった。
検討をお願いする…は違っていた
山井議員は21日、会見で首相答弁の違いについてこう解説した。「(19日の岸田首相の答弁は)“お願いしています”と述べたから、答弁を聞いた人は、今やっていることを説明したにすぎないとわかるが、なぜかきのう(20日)は前後(の文)を変えたために“お願いする”と言っているので、聞いた人は、これからお願いするのだな、新たな通知が出るのだな、と聞こえた。しかし、政府の担当者に説明を聞くと、『よく読んでください、そのあとに“ともに”と続いているでしょ、ともに―支援を行うこととしております。で、終わっていますから、泉さんの答弁とは変わっていなくて、すでにやっていることを言っているので今後のことを答弁したのではありません。よって岸田首相の20日の答弁によって新たな通知が国から出たり、新たなお願いを国からするということはありません』という結論だった」というのだ。
山井議員はこう続けた。「ちょっと罪な答弁だなと思うのは、その説明を聞けば『給付金の支給の検討をお願いする』と言っているんです。お願いすると総理大臣が言った以上、今後やるんだなと思いますよね。一つ謎なのは、19日の泉さんへの答弁と20日の水岡さんへの答弁とどういう意図を持ってなぜ入れ替えたのか、入れ替えたことによってあたかも一歩も前進していないのに、今後、岸田総理が動きますよという前向きな印象を与えるんですね、この答弁は。いかにも前に進むような答弁をして実際は1ミリも前進してない答弁。“聞く力”ではなくて“聞いたふり”なんですよね」と皮肉り、さらに「やってるふり、聞いているふりのアリバイ作りにすら思われかねない」と批判の声を強めた。
立憲民主党は、24日からの予算案の審議でも「10万円不支給問題」を岸田首相に直接、質す考えだ。
(フジテレビ政治部 野党担当)