世界初の手術でブタの心臓を移植された男性が、手術前に装着していた人工心肺装置ECMO(エクモ)を外すことができたとFNNの取材で分かった。

ブタの心臓をヒトに移植

米メリーランド大学が、重い心臓病を患う57歳の男性にブタの心臓を移植する手術を行ってから4日。

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男性は、手術前に装着していた人工心肺装置ECMO(エクモ)を現在外していることがFNNの取材で分かった。

男性に移植された心臓は、刺激を与える薬剤も必要なく、正常に動いているということだ。
移植されたブタの心臓は、再生医療企業によって拒絶反応が起こらないよう10カ所の遺伝子が操作されていた。

ブタの臓器は人間と似ている

榎並大二郎キャスター:
今のところ順調ということです。今回移植に使われたブタの心臓は、再生医療に取り組むアメリカの企業が研究しているものです。

世界初のブタからの心臓移植ということですが、なぜこのブタが選ばれたのか。
移植・再生医学が専門の東京慈恵会医科大学の小林英司教授によると、ブタの心臓や肺といった臓器が人間のものと似ているからなんだそうです

加藤綾子キャスター:
ここが驚きですよね。なんでブタなんだろうってやっぱりちょっと離れてるような存在に思ってしまって。

榎並大二郎キャスター:
類人猿とかの方が近い感じがしますよね。ただ、ブタの方が似ているということです。とはいえ、普通のブタは体重が100キロを超えていて心臓も大きい、人間の移植には適さないそうなんです。そのため、今回は体重が100キロ以上にならないように、移植用に改良したブタを使っているということです。

加藤綾子キャスター:
ブタの心臓となると、拒絶反応とかそういった問題がないのかなって不安になるのですが。

榎並大二郎キャスター:
通常のブタの心臓を移植してしまうと、やはり人間の血液が固まってしまうといった拒絶反応の恐れがあるということです。

そのため今回の移植に使われたブタの心臓は、人の遺伝子を入れたりするなどして、10カ所以上の遺伝子操作が施されているということで、今のところ拒絶反応も出ていないということです。

移植を待つ患者の新たな選択肢

榎並大二郎キャスター:
このブタの心臓移植に踏み切った背景として、移植のための「ドナー不足」というのも挙げられています。日本でもそうですが、いまアメリカでは約11万人の移植を待つ人がいます。そして、毎年6000人以上の患者さんが、移植を受ける前に亡くなっているんです。

さらに、小林教授によると、ドナー不足には「新型コロナも大きく影響している」ということです。コロナに感染した患者さんの臓器は、しばらくの間ウイルスが残っていて、移植には使えなくなってしまうということだったんです。

加藤綾子キャスター:
今後、人の体でどんな反応が出てくるのかというのは、長くそして慎重に見ていかないといけないところだなと思うんですけれども、ただ移植を待つ患者さんたちの新たな選択肢になるというのは、ひとつの希望なのかなと思いますよね。

榎並大二郎キャスター:
小林教授も「ブタの心臓移植は今回が初めてで、心臓がこのあと何年機能し続けるかまだわかっていない」としています。ただ、心臓移植を待つ間の役割を期待できると話していました。

(「イット!」1月12日放送より)