12月6日に第207回臨時国会が召集され、第二次岸田政権発足後、初となる国会での本格論戦が展開される。

10万円相当給付で野党攻勢か

10万円相当給付で野党攻勢か
10万円相当給付で野党攻勢か
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政府は臨時国会に今年度の補正予算案を提出し、年内の成立を目指す。この補正予算案は、岸田総理大臣が「国民に安心と希望を届けられる十分な内容」としてまとめた新たな経済対策の裏付けとなるもので、コロナからの回復のための各種政策が盛り込まれている。

中でも注目されるのが、「18歳以下への10万円相当の給付」だ。年収960万円の所得制限のもと、18歳以下の子どもがいる世帯に1人当たり現金5万円とクーポン5万円分を政府が支給するものだが、野党側から「経済対策なのか困窮対策なのか軸足がはっきりしない」と批判の声があがっている。さらに現金とクーポンを分けて給付した場合の事務費用が、全額を現金で一括給付した場合の事務費用に比べて、900億円以上増加することが明らかになっている。政府は「クーポン支給なら使用期間を限定するので有効な需要につながる」と説明しているが、立憲民主党は「現金一括支給の方がシンプルで早いのではないか」と指摘している。国民民主党の玉木雄一郎代表は、自身のツイッターで、クーポン支給での事務費増加分について、「このお金を使えば所得制限で対象から外れた世帯にも配ることができる」と批判している。

10万円相当の給付を含んだ今年度の補正予算案は国民の生活に直結するだけに、政府が納得できる説明を行えるか注目だ。

“議員特権”の「文通費」改革は見送りか

国会議員の「第2の給与」とも言われる「文書通信交通滞在費」、いわゆる「文通費」の問題も注目だ。10月31日投開票の衆議院選挙で、初当選した議員らが、在職1日にも関わらず、10月の1ヶ月分の文通費100万円を受け取っていたことが明らかになり、波紋を呼んだ。

文通費は、国会議員にとって「第二の給与」とも言われる
文通費は、国会議員にとって「第二の給与」とも言われる

自民党と立憲民主党は11月の時点では、この臨時国会で、文通費の在り方を定めた歳費法を改正し、日割りで支給できるように改める方向で一致していた。しかし、その後、日本維新の会と国民民主党は共同で、方針を転換した立憲民主党は単独で、「日割り」に加えて、収支報告書の公開を義務付ける法案を提出する方針を示した。

一方で、自民党内からは「日割り支給以上のことはしない方がいい。何を買って、いくら使ったとかなどの議論をすると、文通費を無くすところまでいってしまう」との声が出ていて、使途公開などについては慎重な立場で、ある自民党幹部は3日、「日割りだけでもと思ったが、臨時国会では無理だ」と話し、この臨時国会での、「日割り」支給の改正を見送る考えを示した。

文通費は“議員特権”と批判されることも多く関心の高いテーマだけに、改革が見送られることになると、世論の反発が強まりそうだ。

「聞く力」の岸田首相 「話す力」は

「聞く力」の岸田首相 「話す力」は・・・
「聞く力」の岸田首相 「話す力」は・・・

臨時国会では“国会論戦の花形”ともいわれる予算委員会が開催される予定だ。慣例として全大臣が出席する予算委員会には岸田首相も出席する見通し。岸田首相が就任して以来、与野党の代表質問などで国会論戦は行われてきたが、全ての質問が終わってから答弁する代表質問とは異なり、予算委員会では、質疑応答が一問一答の形で行われる。そのため、テンポ感のある白熱した議論となりやすいため、野党側は追及しやすく、政府側はより慎重な答弁が求められる。

これまでも、安倍元首相が質問する野党議員に対して「意味のない質問だ」とヤジを飛ばし、委員会が紛糾、その後謝罪に追い込まれた。また、菅前首相は、慎重な対応をし過ぎたせいか、同じフレーズを何度も繰り返して説明したとして、野党側に「壊れたレコーダー」と批判された。いずれも予算委員会での一幕だが、丁々発止の議論が行われるため、岸田首相にとっても正念場となることが予想される。岸田首相が自負する「聞く力」だけではなく、「話す力」も試されるだけに、岸田首相が予算委員会にどのような姿勢で臨むかに注目が集まる。

16日間に渡り論戦が展開される国会で、岸田首相が国民に対して一つ一つの政策をどこまで丁寧に説明することができるかが、岸田政権の今後を占うこととなりそうだ。

(フジテレビ政治部・与党担当 高橋洵)

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