”文通費”見直し法案 臨時国会は「絶望的」

国会議員の「第二の給与」と指摘されている文書通信交通滞在費、いわゆる「文通費」をめぐり、日本維新の会と国民民主党は、臨時国会に共同で見直し法案を提出することになった。だが、現時点で、野党第1党の立憲民主党や自民党などとの合意形成の見通しはなく、臨時国会での法改正は絶望的だ。

文通費は、国会議員に対して、給与に当たる歳費とは別に月額100万円が支給される。非課税で使途の報告や公開義務がないことから、国会議員の「第二の給与」と指摘されている。
10月31日に投開票が行われた衆院選で当選した新人や元職の議員に対し、在職わずか1日でも10月分の100万円が満額支給されたことから批判の声があがった。文通費は、歳費とは違い「日割り」支給になっていないためだ。

文通費は、国会議員にとって「第二の給与」と指摘されている
文通費は、国会議員にとって「第二の給与」と指摘されている
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自民・公明両党を含め主要な与野党は、6日召集の臨時国会で、文通費を「日割り」支給にする法改正を目指すことで一致していた。ただ、「日割り」支給では一致しているが、日本維新の会は、さらに「領収書の公開」と「余った場合の国庫返納の義務づけ」を加えた3点セットを求めている。国民民主党と法案の共同提出に向けた調整を進めているが、自民党などとの合意は困難な情勢だ。

「文通費」を巡る各党の考え

自民党は「領収書の公開」には慎重な姿勢だ。一方、立憲民主党も3日、「領収書の公開」を含む法案の骨子案をまとめた。公開を求める維新・国民や立憲と自民との溝は大きい。

国民民主党は、「日割り、公開、国庫返還」の3点セットについては、維新とは方向性は同じだ。ただ、維新が、文通費の未使用分の国への返還を「義務づける」としているのに対し、国民は、日割りにしていることから未使用分の返還には触れていない。両党は現在、こうした違いについて調整を続けており、6日の国会召集後できるだけ早く法案提出したい考えだ。

一方、野党第1党の立憲がまとめた骨子案は、国民に近い内容だ。ただ、国会対策上の距離感から、立憲は、維新・国民との共同提出に加わるかどうかは、不透明な情勢だ。

「日割り」すら実現遠のく

国会では、「議員の身分」に関わることは与野党全ての会派が一致して採決をするという慣例がある。与野党の合意が得られた法案は、全会一致で審議時間を短縮して成立させる。「文通費」も、各党が与野党合意を目指していたが、維新などは「日割り、公開、国庫返還」の3点セットを譲らず、自民党との隔たりは埋まらない。
自民党幹部は3日、「臨時国会の日割り法案は無理。日割りだけでもと思ったけど、フルスペックと言うから、無理になった」と語った。

維新の馬場伸幸共同代表は2日、記者団にこのように語っている。「日割りだけでも成立すれば小さな一歩になるという意見も党内にはある。一方、今までの国会の流れを考えると、恐らく日割りをすれば“それではい、しゃんしゃん”で終わりとなる。一切、我々が何か声を上げても相手にされないと言うことが想定されるので、今回の話は小さな一歩では終わらせないというのが、我々の考え方なので、文通費については、小さな一歩を認めずに徹底的に改革すると言う方針で最後までやっていく」。

一方、立憲の議員からは、全く違った見方が出ている。「もともと維新を含む各党は、『日割り先行』で合意していた。ところが、直前になって『大阪が…』と言ってきて、3点セットを譲らず、合意できていた日割りさえも臨時国会でできなくなってしまった」

いずれにしても文通費の見直し法案の成立は、臨時国会での成立は困難な情勢だ。在職1日で100万円満額支給と批判を受けた10月分については、現在の法律では国庫に返納することができず、各議員が自主的に寄付するしかない。次の国政選挙でも今回のような事態が起きることは想定される。各党の主張の違いを乗り越え、根本的な解決のための真摯な法改正議論を期待したい。

(フジテレビ政治部 千田淳一 伊藤聖 原佑輔)

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