20回目の被災地・福島訪問 新型コロナで厳戒態勢
東日本大震災の発災から、3月11日で9年となります。
安倍首相は7日、福島県を訪問し、東京電力福島第一原発の事故による避難指示が一部解除された双葉町などを視察しました。福島県への訪問は去年4月以来で、震災以降20回目です。また、岩手・宮城・福島の被災三県への訪問としては43回目です。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くのイベントが中止となる中、3月11日の政府主催の東日本大震災9周年追悼式も中止になりました。
今回の安倍首相の福島訪問は、地元の人や記者との接触をできるだけ少なくするなど、新型コロナウイルスの影響を受けた異例の対応が取られました。
常磐線9年ぶり全線開通へ 安倍首相が試乗
JR常磐線は、震災による津波で線路が流されたことや原発事故の影響などで、多くの不通区間がありました。復旧作業が進められた結果、3月14日に、9年ぶりに常磐線全線での運転が再開します
安倍首相は、今回、新たに開通する区間内の富岡駅から双葉駅まで、常磐線の訓練運転車両に乗車しました。
しかし、この乗車の様子を、安倍首相と同じ車両で取材することはできませんでした。記者は、出発駅の富岡駅のホームでマスクを配布され、手をアルコール消毒して、安倍首相と別の車両に乗車しました。関係者によると、これは、新型肺炎の感染拡大を受け、記者と安倍首相との濃厚接触をできるだけ避けるためだということです。
また、テレビカメラでの取材は、富岡駅では許されず、到着駅の双葉駅で、列車が到着するホームと線路を挟んで反対側のホームから撮影するだけでした。
約15分間の乗車を終えて双葉駅に到着した安倍首相は、ホームで、双葉町の伊澤史朗町長から、今後の住民の帰還に向けた対応などについて説明を受けました。
線路を挟んでの取材では、記者が肉声を聞き取れないだろうとの配慮なのか、伊澤町長と安倍首相の声はスピーカーで流されました。
常磐道インターチェンジ開通式は一般客なし
震災から9年がたち、鉄道に続き、高速道路などインフラの整備も進んでいます。
常磐線に乗車した後、安倍首相は、常磐自動車道の常磐双葉インターチェンジの開通式に出席しました。このインターチェンジの開通は、住民の帰還促進や、原発事故に伴う廃炉作業の進展など、復興への効果が期待されています。
開通式は、当初、一般客も招いて行われる予定でしたが、新型肺炎の感染防止のため、一般客の入場をなくすなど、規模を縮小して開催されることになったということです。
安倍首相は、福島県の内堀知事や双葉町の伊澤町長らとテープカットを行い、「開通するインターチェンジは、みなさんの暮らしを支えるとともに元気な経済を作る基盤となる」と祝辞を述べました。
犠牲者を追悼 慰霊碑に献花
その後、安倍首相は、浪江町で、海沿いにある町立大平山霊園内の東日本大震災慰霊碑を訪れました。東日本大震災で犠牲になった人々の鎮魂と、町の復興のために2017年に建立された記念碑です。
関係者によると、この訪問地は、政府主催の追悼式中止の正式決定とほぼ同じタイミングで、急遽追加されたということです。安倍首相は慰霊碑に献花し、手を合わせて犠牲者を追悼しました。
「福島に移住を…」首相が語る復興への思い
一連の視察を終えた安倍首相は、記者団に対し、双葉町で避難指定地域の一部解除されたことについて、「特定復興再生拠点の整備を進め、避難生活を送っておられる方々が浜通りに戻ってきていただけるように努力を重ねていく」と述べました。さらに、「避難している方々にとどまらず、日本中の多くの方々に、この浜通りに移住をしていただきたい」と強調しました。
また、新型コロナウイルスの影響で各種行事が相次いで取りやめとなっていることについて、「この1、2週間が山場であるとの提言を受け、国民の皆様にご協力をいただいている。国民生活、また国民経済への影響を最大限緩和するためにあらゆる対策を講じていく」と理解を求めました。
官邸内には「本当に行っていいのか」の声も
新型コロナウイルスの拡大を受け、ある官邸関係者は、「被災地とはいえ本当に行っていいものなのか。裏目にでなければいいと心配している」と語っていました。
政府主催の追悼式は、規模を縮小してでも開催しようとギリギリまで調整していましたが、結局断念しました。それだけに、安倍首相は、何としても予定通り福島訪問をしたいと考えたのでしょうか。
安倍首相は、3月11日、首相官邸で献花式に臨み、震災が発生した午後2時46分に合わせて黙祷し、犠牲者への追悼と復旧・復興への思いを式辞で述べる予定です。