9月は防災月間。
災害時の有効な通信手段の1つ「アマチュア無線」。
その従事者は、年々減少傾向にあったが、このコロナ禍で再び注目を集めている。
熊本県内の愛好家たちを取材した。

東日本大震災きっかけに防災チーム設立

浄土真宗本願寺派の住職・寺添和南さん。
寺添さんのもう1つの顔が…

寺添和南住職:
JKAL各局、JKAL各局、こちらはJG6YHWです

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寺添さんは東日本大震災をきっかけに、アマチュア無線の免許を持つ僧侶などで作る防災チーム「JKAL」を設立した。
毎月、定期的に訓練を行い、災害などの非常時に備えている。

玉名:
こちらの方には、了解度「5」、信号は「7」の「57(完全に了解できるかなり強い信号)」で入ってきています

寺添和南住職:
現在地どうぞ

(熊本市南区城南町より):
熊本市南区城南町を移動。「55(完全に了解できるかなり適度な強さの信号)」です

どこまで電波が届くのかを把握し、実際に交信できるかどうか確認していく。

(清和高原天文台より):
JM6……

寺添和南住職:
ちょっと弱いなあ…現在地はどちら?

(清和高原天文台より):
上益城郡山都町清和天文台…

(長崎・雲仙岳より):
こちら雲仙岳から。標高が850メートル付近

(大分・釈迦岳より):
現在地、釈迦岳展望所。標高は1,230メートル。非常に良好に(電波が)入っています

寺添和南住職:
趣味の世界に間違いないけれど、災害などの非常通信にアマチュア無線はもってこいだろうと思いますね

熊本地震でも無線ネットワーク活躍

アマチュア無線は、受験資格に年齢制限がない国家資格で、携帯電話が普及する前の1990年代に手軽なコミュニケーション手段として人気となった。

1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災では、さまざまな通信網が遮断される中、アマチュア無線の電波は途切れることなく、情報の収集や災害支援に重要な役割を果たした。2016年の熊本地震でも、無線のネットワークが活躍した。

熊本地震・本震の翌日に、約650km離れた岐阜県の愛好家と交信した熊本市の西山弘昭さん(68)。

西山弘昭さん:
「困っていることはありませんか?何か足りないものはありませんか?」そのような呼びかけでした。「水が足りない、食料品が足りない、生理用品などが足りない」そういうことを申し上げました。そういった通信を数十人が傍受して、内容を共有していたということです

それから毎日 交信を行い、無線のネットワークを通じて支援物資などを受け取ることができたという。

しかし、携帯電話やインターネットの普及で、近年アマチュア無線局は減少。
1990年代半ばには約136万5,000局あったアマチュア無線局は、2021年3月末には約39万局にまで減ってしまった。

一方、愛好家で作る団体・日本アマチュア無線連盟の会員数は、2020年度に27年ぶりに増加したというデータが。

総務省 九州総合通信局 無線通信部陸上課・西森宏行課長:
多くの人と交信する方もいらっしゃるし、非常時のボランティアなどに興味をお持ちの方もいらっしゃる。コロナ禍で時間ができて、無線局の運用を再開される、そういうことで会員に戻られたということはあるかもしれない

災害時の通信手段の1つとして再注目も

無線機器を取り扱う熊本市東区の「クマデン」では、免許を取得するための講習会を定期的に開いていて、毎回20人以上が受講している。

受講した小学5年生:
無線は地震や災害の時に役に立つので、(講習会を)受けに来ました

八代市坂本町の有資格者:
坂本地区は水害がひどかった。携帯も通じなくて、こういう時にはアマチュア無線。50年ぐらい前からやっているので、孫に(免許を)取ってもらおうと思って

小学3年生の孫:
楽しかったです

クマデン・宮﨑由紀夫さん:
SNSの文字のつながりより、リアルにその人を感じられる。声だけですが、無線機の向こう側に生身の人間がいる。それが実感できると思います

趣味として、また災害時の有効な通信手段の1つとして、コロナ禍に再び注目を集めているアマチュア無線。
2020年7月の豪雨被災地・球磨村では、その教訓を生かすため、10月に講習会が開かれる予定だ。

(テレビ熊本)

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