厚生労働省は、新型コロナウイルス感染による全国の自宅療養者が初めて10万人を超え、11万8035人になったと発表した(8月25日現在)。自宅療養者には原則、入院先などを調整中の感染者は含まれない。実際には、さらに多くの人が自宅で療養している可能性がある。
症状が悪化しても、病床のひっ迫により、すぐに入院できない状況が続く自宅療養者。それを支える医師を取材した。
この記事の画像(6枚)東京・大田区の「ひなた在宅クリニック山王」は、在宅医療を専門としていて、中等症患者の往診も行っている。 自宅療養者を治療する田代和馬院長のスマホには、ひっきりなしに往診依頼の電話がかかっていた。
8月22日午後6時半ごろ、田代院長が駆けつけた先は、1人暮らしの30歳の男性の自宅。 玄関前に救急隊が待っていた。
救急隊員:
酸素を投与してから、酸素飽和度が91%から95%を上下している状況です
田代院長:
搬送先は見つからない?
救急隊員:
64カ所の病院に問い合わせていますが、今のところ搬送先がない状態ですね
田代院長:
64カ所も…
この男性は、8月10日に陽性が判明。その後、自宅で療養していたが、この日、突然、呼吸が苦しくなり、自ら救急車を呼んだという。
東京都は『酸素飽和度96%未満』を入院対象としているが、男性の酸素飽和度は一時84%まで低下していた。救急隊が酸素を投与した後も96%に満たなかった。 その状態で64カ所もの病院に受け入れを断られていた。
男性の許可を得た上で、院長が往診の様子を撮影してくれた。
田代院長:
酸素を吸って楽になった?
男性患者:
楽という感じではないです
田代院長:
30歳でもこんな風になるんだと僕も驚いているんだけど…今、重症度は中等症Ⅱの中でも重い方だと思います。酸素吸入は24時間行ってください
男性患者:
はい
往診から6時間後の午前0時半ごろ、やっと男性の搬送先が見つかった。しかし保健所から「男性が電話に出ない」との連絡を受けた田代院長は不安になり、再び男性宅に駆けつけた。
男性の酸素飽和度は82%まで低下していて意識が朦朧としていた。
「本当に間一髪だった…」 男性の入院の準備をしながら、田代院長はそうつぶやいた。 男性は1週間後に退院できたという。
ひなた在宅クリニック山王 田代和馬院長:
医療機関への負担というものはまだまだ大きいものがあります。 重症化してしまう人が多い。 そして重症化した時のその重症度が高い
ひなた在宅クリニック山王 田代和馬院長:
こういった感染症は経験したことがないので、基本的に入院、あるいはホテル療養で経過をしっかり診なければならないと思っています。 そのためには、キャパを増やすこと以上に、感染者を減らすということが非常に重要になってくると思っています。
”災害レベル”となった新型コロナには、一人一人が当事者意識と危機感を持って対峙する覚悟が必要だろう。
(フジテレビ社会部・コロナ取材班 小河内澪)