アフガニスタン政権の崩壊とタリバンの占拠をめぐって、米ホワイトハウスが機密情報を ツイッターで漏らすという大きな誤りを犯していたことが明らかになった

この問題が深刻化した先週末、バイデン大統領は避暑地キャンプ・デービッドで夏休みを過ごしており、そのこと自体が大統領の危機感の欠如の証だと非難されたため、ホワイトハウスはそれを否定するために、大統領がキャンプ・デービッドで前線部隊と協議しながら指揮を取っていると写真入りのツイッターで広報活動を行なっていた。

マルチ画面に「CIA」の文字が

16日も、キャンプ・デービッドの会議室で出先の担当者が報告に参加しているマルチ画面を前に、バイデン大統領が1人対座している写真と共に次のようなツイッターを発信した。

「大統領と副大統領は今朝、国家安全保障担当者と高官と会合を持ち、アフガニスタンの米民間人や米国へのビザを求めているアフガニスタン人、それに他のアフガンの同盟者たちの安全確保の問題について最新報告を受けた」

その文言はともかく、問題になったのは大統領が会話をしていたマルチ画面だった。

ツイッターに投稿された写真のマルチ画面を拡大すると・・・(ホワイトハウス公式ツイッターより)
ツイッターに投稿された写真のマルチ画面を拡大すると・・・(ホワイトハウス公式ツイッターより)
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「この写真を撮ったのは誰だ?! 諜報担当者の顔を露出させてしまった。なんてことだ」

トランプ政権で情報局長代行だったリチャード・グレネル氏がすぐにこうツイートした。

そのマルチ画面には9人の報告者が映っていたが、画面左下の男性の小画面には「CIA(中央情報局)」と字幕が入っており、その右側の画面には「ドーハ(カタールの首都)支局」とあったのだ。

CIA支局の存在も明らかに

CIAの活動は公表されず、その構成員の身元も秘匿されている。またCIAの支局はその存在すら明らかにされていない。それが、このホワイトハウスの写真で暴露されてしまうことになったわけで、米国の中東の情報活動の支障になったのは間違いない。

現地では「制御不能に陥った市民」が有刺鉄線を乗り越え空港へ殺到
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このニュースにすぐ飛びついたのがイランで、半国営のファールス通信が大々的に伝えたほか、ロシアのRT通信も写真入りでニュースにした。

ホワイトハウスのスタッフとしては、大統領が夏休み返上でこの問題に取り組んでいることを証明したかったのだろうが、その結果機密情報を漏洩させることになってしまったのは、政権の混乱を証明することになってしてしまったようだ。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】

【表紙画像:ホワイトハウス公式ツイッターより】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。