専門店のメロンパンがそのままマスクに

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、マスクが手放せない毎日が続いている。

すっかり生活に馴染んだマスクだが、これからやってくる暑い季節に向けた冷感マスクや、メイクが付きにくいマスクなど、日々様々な進化を遂げていることは知っていることだろう。

そんな進化型マスクが登場する中、どうにも気になるマスクが現れた。それが「株式会社 悟空のきもちTHE LABO」から発売された「マスクパン」だ。

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このマスクパン、どこからどう見てもメロンパンにしか見えないが…それもその通り、なんと本物のメロンパンに耳かけ用のひもを通したアイテムなのだ。

悟空のきもち THE LABOによると、パンを愛する福岡と沖縄の19歳~20歳の大学生が中心となって開発したもので「世界初の食べられるマスク」。メロンパン専門店「Melon de melon」のプレーンメロンパンを使用しており、ゴム紐とゴム通しがセットになった形で販売されるという。

このマスクパン、2021年5月に渋谷・秋葉原で配布イベントを実施したところ、用意した200個の配布が約10分で終了。さらに、6月8日に発表された際は、6月10日の発売に先駆けての販売で初月分として注文していた300個が完売するなど、大注目のアイテムとなっているのだ。

しかし、すごいのはその見た目だけではないようだ。

実はこのマスクパンは「飛沫噴射防止性の可視化実験」を行ったところ、一般的なウレタンマスクと同等以上に飛沫の拡散を抑える効果があることがと示されたというのだ。

実験動画を見てみると、マスクなしの時は口元から飛沫が大きく飛んでいるのに対し、ウレタンマスクとマスクパンを着けたモデルではあまり飛沫が飛んでいないのがわかる。

確かに、きめ細かいパン生地部分は不織布のような役割がありそうな気もするし、そのパン生地を覆うサクサクのクッキー生地は、飛沫を逃さないようにきっちりとガードしてくれそうな気もする…

SNSではさっそく「これは笑ってしまう」「すごい発想だ」という声や「ちょっともったいない気も…」「すぐ食べたくなっちゃう」「マスクパン…マスクメロン…?」などなど、様々な声が飛び交っている。

使用上の注意を読んでみても「製品の特性上、メロンパンの香ばしさが魅力的に顔に付着します。マスクの内側を食べた場合、性能は低減します。ご了承ください」という美味しそうな情報しか書かれておらず、どうにも気になるこの「マスクパン」。

一見ジョークグッズのようにしか見えないこの「マスク」について、悟空のきもちTHE LABOに詳しくお話を聞いてみた。

マスクは「パンの幸せを最高に感じる究極形」!?

――「マスクパン」を作ったきっかけは?

3月ごろに、メロンパン好きの19歳の学生2人が「パンの香りをずっと嗅いでいたい」と思い、最高に幸せなパンの食べ方として、マスク紐にパンをつけ、ずっと香りを嗅ぎながら、我慢できなくなったら、たまに食べる行為をはじめたのがきっかけです。

だんだんそれをする子が増え、みんな幸せな気分で楽しくなり「これ日本中に伝えたら、みんな幸せ感じるかも」って思うようになりました。


――では「マスクとしても使えるパン」ということ?それともあくまで「マスク」なの?

そこは、本当に難しいところです。パン好きの子達が思う「パンの最高に幸せな食べ方が、マスク!!」という結論のもとで、とくに家庭内で、芳醇な香りをかぎながら、我慢できなくなったらちょっと食べる!を繰り返してもらうのが本来の使い方と思っています。

つまり、これは 「マスクとしても使えるパン」ではなく「マスク」として開発されたパンでもなく「パンの幸せを最高に感じる究極形がマスク」として作られています。

ただこのご時世で、そんなマスクの提案は受け入れられにくいと感じ、第三者機関による製品の評価試験なども受け、自信をもって発売に至りました。

口に当たる部分はフィット感も重視
口に当たる部分はフィット感も重視

――では、マスクにするために特殊な加工などはしていない?

パンの香りを損なうため、薬品の塗布などは行ってません。口にフィットする形で焼き上げると、カチカチになって少しだけ痛かったので、肌に優しくなるように、焼いた後で加工しています。


――気になるマスクとしての性能、飛沫噴射試験の他にどんな実験をした?

第三者評価機関の認識では、メロンパンはそもそもマスクとは認められないという理由や、計器故障の恐れがあるなどの理由で、マスク製品の評価試験機関などから、学生たちはいくつも断られました。

ご理解を頂いたユニチカガーメンテック研究所にて飛沫防止の可視化試験のみ実施できたため、飛沫量の数値やウイルスの透過率などの数値はございませんが、映像でご覧いただける通りメロンパンは、飛沫にも微動だにせず、まったく通していないのはお分かりいただけると思います。

実験中の様子
実験中の様子

焼きたてのパンの香りを楽しみつつ、おもむろにパクリ…そんな「パンの楽しみ方」を追求した結果、マスクという形にたどり着いたという悟空のきもちTHE LABO。

とはいえ、感染予防のためのマスクが手放せない中「パンの幸せを感じるマスク」というのはなかなか受け入れてもらえなさそうという点をクリアすべく、しっかりと「マスクとして評価される」ことで、見事発売までこぎつけたのが、このマスクパンなのだ。

気になるマスクとしての性能は「そもそもマスクではない」という理由から、専門機関で細かくチェックすることはできなかったというが、唯一チェックできた試験ではウレタンマスクを着けているのと同じくらいの飛沫拡散防止力を見せたことから、完全なジョークグッズというわけではないことも伝わってくる。

同社の公式サイトには「メロンパンがマスクより優れていた」というメッセージも掲げられているが、マスクとしての性能だけではなく、ちょっと笑えて心が和むというのも、ひとつの評価ポイントになっているだろう。

使い方は「自宅でちょっとずつもぐもぐして」

――「パンでマスクを作る」というアイデア、社内ではどんな反応があった?

思いのほか、やってみたら楽しい気分になり、みんなやりたい!に変わりましたが、幸せになる以外に、マスクとしての第三者機関の評価もないと、このご時世では怒られそうだよね~という感じでした。


――汚れやふやけが気になる…どんな使い方をすればいい?

感染防止の観点からも、自宅以外でのご使用の場合は廃棄しなくてはいけないので、可能なら自宅でパンの芳醇な香りを楽しみながら、ちょっとずつ内側からもぐもぐしていただければと思います!


――マスクパンはどんな場面で活躍してほしい?

コロナを忘れて、日本中が幸せと微笑みが思わず出るよう、自宅でパンを味わう最高に幸せな食べ方として定着して欲しいと思っています。マスクパンの幸せで、閉塞感漂うこの時代を上書きしたいと思っています!

ちなみにこのマスクパン、本物のパンでできているためもちろん食べられるのが魅力なのだが、屋外で使う場合は外側にウイルスが付着する可能性があるため、内側のふわふわのパン生地部分のみ食べるのが正しい使い方。しかしこの場合、外側の部分を廃棄することとなるため、自宅の中で着用することがオススメだという。

現在、ヨーロッパやアジアはじめ海外メディアなどからも取材依頼が寄せられ、購入者の約20%は海外からの注文だというマスクパン。マスクパンは悟空のきもちTHE LABOの公式サイトから購入でき、5個セットで1800円(税込)。クール便で配送され、使用期限は解凍後1日だという。

機能性マスクが次々登場する中、「パンを楽しむ」ことに特化した驚きのアイテム。思わず笑ってしまうこんな「マスクパン」を取り入れて、withコロナのおうち時間を過ごすのも楽しいかもしれない。

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プライムオンライン編集部
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