「美肌マスク」…あったらいいなで新市場開拓へ
顔のシートマスクでパックをしている間に寝てしまい、起きたら肌がカサカサに!…という経験をしたことがある女性も少なくないだろう。
そんな女性のニーズに応える美容アイテムを、小林製薬が発売した。
新たに開発された「美肌マスク」。
かたちは通常のマスクと変わらないが、つけて寝るだけで一晩中肌に保湿成分が浸透し、しっとりもちもちの肌になる効果があるという。
パックはつけたまま寝てしまうと肌の水分量が逆に奪われてしまうが、この「美肌マスク」の特徴は、つけて寝るだけでいいという点。
実際に記者も使ってみたが、夜中にはずれてしまうことがなく、息苦しさも感じなかった。そして、翌朝のお化粧乗りがいつもよりよかった印象だ。
「美肌マスク」はどのように開発されたのか。
担当者によると、睡眠時に気にならないよう、口元に張り付かないための空間を持たせると共に、起床時に乾燥が気になる頬や目の下まで広い部分を覆うことができる形状にすることに苦心したという。
開発期間は通常の倍近くの3年を要した。それでも完成にこぎ着けたのは、「新しいカテゴリーを作りたかったため」と、担当者は話す。
日本のマスク市場は2018年度には前年比106%、554億円と過去最高に達するなど年々増加傾向にあり、今後も成長が見込める市場として注目されている。
また、小林製薬の調査によると、マスクの使用目的は風邪や花粉予防はもちろん、約16%の女性が顔の保湿のために使用している。
小林製薬は、保湿を目的とした加湿マスク市場ではシェア80%を獲得しているものの、マスク全体の市場ではわずか3%にとどまっている。
今回の「美肌マスク」のような、スキンケアマスク市場を新たに確立することでマスクのシェア拡大を狙いたい考えだ。
社内開発体制を活性化
そこで力を入れているのが、『社内アイデアでイノベーション製品を生み出す企業風土の確立』。
例えば、どんな部署に所属していても毎月アイデアを提案できる制度があり、2018年度には5.2万件ものアイデアが集まったという。
また、8月22日の創立記念日に行われた「全社員アイデア会議」をのぞいてみると、次の新製品開発に向け活発な議論が交わされていた。
既存のヒット商品にさらに変化・工夫を加えた商品の提案や、自身が抱えていた悩みを解決するための商品案、社会で問題となっている課題の解決を目的とした商品アイデアなどが並んだ。
自身も金属アレルギーを持つという女性社員が、意外と身近なものに金属が多いことに着目。自由におしゃれがしたいという自身の経験から提案に至った商品案のプレゼンが、次のステージに勝ち残った。
各社で広がる「社内アイデアから開発」の動き
他企業との化学反応を期待し、協業やオープンイノベーションが加速する一方、近年ではこのような社内開発体制を整える企業も増えている。
日用品大手のライオンは、2019年4月から新価値創造プログラム「NOIL」を始め、「ヘルスケアの常識を破る事業であること」をテーマに、グループ会社の従業員も含めアイデアを募った。
掬川社長は、この新しい挑戦について「既存事業によりかかった状態では将来的にはリスクが発生すると思う。新しいビジネスモデルを作っていく必要がある。イノベーションに果敢にチャンレンジすることを研究だけではなく(ビジネスサイドのメンバーも)しっかり風土として根付かせていきたい」と話している。
今回120名近くからアイデアが集まったが、開発担当部署以外からの応募のほうが多く、新入社員からも提案があったそうだ。
社員の誰もが、自分が提案したアイデアを事業として実現できる…そのモチベーションが社内アイデアの活性化につながっているのかもしれない。
(フジテレビ報道局 経済部記者 奥山未季子)