新型コロナウイルスの感染拡大はいまだに終息の兆しが見えない。
そんな中、シリーズで連載する「名医のいる相談室」では、各分野の専門医に病気の予防法や悩みの対処法などをわかりやすく解説してもらう。

今回は、「新型コロナとインフルエンザへの備え」について、内科の名医・久住英二先生に話を聞いた。
 

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インフルエンザの流行と対策

<質問>
今年のインフルエンザの流行はどうなる?

久住先生:
今シーズン、これからの冬にかけてインフルエンザがどう流行するかは全く読めません
ウイルスは面白い性質を持っていて、同時に複数のウイルスは流行しないようなんです。いくつかの風邪ウイルスが検証されていますが、片方の流行が終わってから次が始まるという特徴があります。
その理由はわかりませんが、同時流行は多分しません。

インフルエンザに対して皆さんが出来ることは、「手洗い、マスク、距離をあける」はすでにやっているので、あとは、インフルエンザワクチンを打つこと
WHOは75%の人がワクチンを打たなければならないと言っています。日本だとだいたい9000万人分が必要ですが、足りていません。

インフルエンザはみんながしっかりワクチンを打ったとしてもそれなりに流行します。それにコロナも来るというダブルパンチの可能性はあります。

新型コロナとインフルの見分け方

<質問>
インフルエンザとコロナウイルスの見分け方は?


久住先生:
見分けはつきません。

インフルエンザは高熱が出て、節々や筋肉が痛くて、すごく辛いイメージですよね。
ところが鼻に綿棒を入れて検査することが普及してくると、軽症な人もたくさんいることがわかってきたので、そこまで含めると症状で診断するのは不可能です。

コロナに関しては無症状の感染者がたくさんいることは報道でも出ているのでわかると思いますが、軽い人もいれば重症な人もいます。

典型的な症状では、「子供はコロナにならないのに熱を出した後、ぼーっとしているからきっとインフルエンザだ」とか、「肺炎で急に一週間目から具合悪くなるのはコロナだよ」といった極端な形をとれば見分けはつきますが、そこまで重症じゃない人も人数としては多いので、症状では見分けられません。

熱が出た場合は、インフルエンザの検査もコロナの検査も受けて、両方陰性だったら普通の風邪かもしれない。
しかし、翌日も熱が高かったら、もう一度検査することが繰り返されます。

<質問>
インフルエンザワクチンを打つ時期は?


久住先生:
インフルエンザワクチンは約半年間は効果があります
10月に打てば4月ぐらいまでもつので、B型が3月ぐらいまで出ますけど流行期はだいたいカバーできます。
長持ちさせたいからと流行が始まってから接種を希望される方がいますが、流行させてはダメなので、早めに接種をしていただきたい。

2021年3月頃から新型コロナワクチン接種開始か

<質問>
この先、コロナはどうなる?

久住先生:
コロナはやがて収束します。それはほかの感染症と同じように、ある程度みんながかかってしまったか、ワクチンによって封じ込められると思います。

1回かかったらもう二度とかからないような感染症は限られていて、はしかや風疹ですね。風邪はRSウイルスも1回かかっても、2、3年すると免疫が弱って再感染します。ただし、1発目に比べて2発目は普通は軽い。

例外は、デング熱だけ。
デング熱は、1回目より2回目の方がきついです。ただし、3回目、4回目はほとんど症状が出ない。

なので、コロナは1発目だけワクチンで免疫をつけて軽めに終わらせれば、2回目、3回目は多分そんなに問題にならない
ワクチンを打っておくことで、ウイルスがあまり増えずに済むからその人から他に広がっていくことは減らせると思いますし、その人も軽症で済むので重症化する人は少なくなっていく。

(イメージ)
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3月ぐらいから医療従事者、高齢者などリスクの高い人を対象にワクチン接種が始まって、5~6月にかけてそれがだいぶ広がってくると思います。

日本国民全員が打ち終わるまでには、2021年いっぱいかかるかもしれないですが、40歳未満の方の新型コロナによる死亡率は、アメリカのインディアナ州のデータを見ると0.01%未満となっています。
ですので、40歳未満の方は打つ必要性はあまりないかもしれません。


家にお年寄りがいるとか、高齢者施設で働いている方は接種、そうでない方は絶対に全員打ちなさいというものではなくなってくるかもしれないです。

久住先生:
全員打った方がいいですけど、日本の若い人が全員打ち終わってから余ったワクチンをアフリカなど貧しい国に回すよりも、日本でリスクの高い人が打ち終わったら、他の国に持って行って若い人は後回しでいいよ、という方が全世界的には合理的だと思います。
そこの細かい調整やすりあわせがどういった形になるかはまだわからないですけどね。

高齢者、医療従事者、および他の合併症がある方が接種していただければ収束すると思いますので、ワクチンがどれくらいの勢いで作られるかにもよりますが、2021年7月~8月にはある程度抑え込めるかもしれないです
この時期スポーツイベントが行われるかもしれないので、アスリートの方も接種対象になると思います。
 

久住英二先生プロフィール:
医療法人鉄医会ナビタスクリニック新宿 理事長
血液内科が専門。感染症や予防接種にも詳しい。
 

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